赤ちゃんの股関節脱臼の治療法
股関節脱臼と聞くと、「痛そう」「歩けない」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、外傷の脱臼とは異なり、痛みはなく、歩き始めたら歩き方がおかしいということで気付かれることがあります。
生まれつき関節が脱臼しているというよりか、生まれた時不安定だった関節が成長とともに脱臼に移行していくことが多いものです。
早期に発見され治療できれば装具で治ることが多いですが、装具で治らなかった場合や、治療開始が遅くなった場合には、治療には手術と、成長してからも定期的な治療が必要になることがあります。
今回は赤ちゃんの股関節脱臼について、原因と早期に発見する方法、治療法について解説いたします。
赤ちゃんの股関節脱臼とは
股関節脱臼とは、骨盤側の凹み(寛骨臼)という受け皿の部分から、大腿骨の骨頭という部分がずれてしまい離れている状態です。
股関節脱臼を発症していても赤ちゃんは痛みもなく、気づかなければそのまま1歳頃には歩くことはできますが、正常な歩き方ではありません。
生後6ヶ月までに診断され装具で治療を開始すると80−85%は治すことができると言われているため、この時までに発見できるよう乳児健診でチェック項目になっています。
股関節脱臼と診断されると、リーメンビューゲルというバンドによる装具での治療を行います。や、それでも改善が乏しい場合や、関節内に治療の妨げになるようなものがある場合は手術が必要になることもあります。
早期に発見ができ、適切な時期に治療がうまくいけば治ることが多いです。
赤ちゃんが大きくなるほど治療が難しく、合併症のリスクが高くなると言われています。
赤ちゃんの股関節脱臼の原因
赤ちゃんの股関節脱臼は原因が複雑で、股関節の骨の形・股関節の骨の成長・関節の柔らかさが強いなど、いくつかの原因が重なって起こると言われています。
股関節脱臼そのものが遺伝することはないですが、骨の形や関節の柔らかさは遺伝的な要因である場合が多いため、血のつながりのある人が股関節脱臼だった場合、受け継ぐことはあるようです。
また、男の子に比べると女の子の方がなりやすく、冬に生まれた子に多かったり、逆子になる発生頻度が高いなどの特徴もあり、たくさんの要因が組み合わさって起こると考えられています。
赤ちゃんの股関節脱臼の見つけ方
早期に発見できたら治療がうまくいくケースが多いですが、痛みなどの自覚症状がないため、発見するのが難しいものです。
1歳になって歩けるようになった頃、歩き方の異変で周囲が気づくという場合が多いようです。
ただ、治療を成功させるためにはもっと早い段階で股関節脱臼を見つける必要があります。
では、赤ちゃんの頃に股関節脱臼を見つける方法をみていきましょう。
【股が開きにくい】
赤ちゃんのおむつ替えの際に、股関節の開きが硬くて開きにくく、おむつを替えにくいことが発見につながることがあります。
おむつ替え以外でも、上向きで寝ている時に左右どちらかにだけ向く癖があり、反対の足が立膝になっていることも多いようです。
【足のしわ】
足の付け根のしわや、太ももやお尻のしわのより方に左右差がある場合があります。
【受診する】
股の開き方が正常でも股関節脱臼という場合もあり、自己判断では気づくことは難しい場合が多いようです。
乳児健診でも股関節脱臼のチェック項目はありますが、早期発見が大切なので心配な場合はできるだけ早めに診てもらいましょう。
専門の医師に診てもらう場合、レントゲンを撮ったり超音波を使用したりすることがありますが、痛みを伴う検査はありません。
赤ちゃんの股関節脱臼の治療法
赤ちゃんが股関節脱臼と診断されたら、どのように治療するのでしょうか。
主な治療法についてみていきましょう。
【リーメンビューゲル治療】
生後6ヶ月以下の赤ちゃんで股関節脱臼と診断された場合は、リーメンビューゲルというバンドの装具をつけて6治療します。
このバンドを使うと、ある程度足を動かすことができ、股関節を自然に整復させ股関節の変形を残すことが少ないという大きなメリットがあります。
早期に発見しこの治療を開始できたらほとんどの場合は治ると言われていますが、生後6ヶ月より大きな赤ちゃんの場合は、別の治療法が必要になることがあります。
【徒手整復(としゅせいふく)】
徒手整復とは皮膚の上から医師の手を用いて整復する方法です。
前述のリーメンビューゲルマンで治らなかった場合、全身麻酔をかけて脱臼した股関節を手で戻す場合もあります。
【観血整復(かんけつせいふく)】
観血整復とは外科的手術で元の正常な状態に戻す治療のことです。
整復を妨げる組織が股関節内にある場合には観血整復を行い、整復後には1〜2週間ほどギプスで固定、さらに数週間も装具の使用が必要です。
【長期経過】
股関節は成長に伴い状態が変化します。
赤ちゃんが股関節脱臼の治療をした場合、おおよそ15歳前後まで定期的に診察をしてもらうことになります。
症状や状態にもよりますが、幼児期には数ヶ月に1回、小学校入学後は1〜2年に1回の診察となる場合が多いようです。
リーメンビューゲルで治った場合は順調に経過する場合が多いですが、徒手整復や観血整復の場合は5歳前後で追加の手術が必要になることもあります。
まとめ
赤ちゃんの股関節脱臼早期に発見できれば治療が成功するケースが多いですが、発見できるのが難しい場合も。
心配な場合は乳幼児検診を受ける前に専門の医師に診てもらうのが良いでしょう。