赤ちゃんの高熱の原因
赤ちゃんは平熱が高く、体温の調整機能が未熟のため厚着をしているだけで熱が出る場合もあります。赤ちゃんの場合は一般的に、37.5℃以上が微熱、38.5℃以上を高熱としています。赤ちゃんが高熱になってしまう原因として、こちらが挙げられます。
・風邪
・インフルエンザ
・中耳炎
・溶連菌感染症
・プール熱
・川崎病
など
また、高熱だけではなく他の諸症状にも注意してみるようにしましょう。高熱が続き発疹などの他の症状がある場合、川崎病の可能性も考えられます。今回はその川崎病について詳しくご説明いたします。
高熱が続く川崎病ってどんな病気?
川崎病とは、全身に血管炎が起こる原因不明の病気です。
最初にこのような病気を発見したのが川崎富作博士だったので、その名前から「川崎病」と名付けられました。ほとんどが乳幼児が罹患する病気で、一番かかる確率の高い年齢は乳児後半(生後6〜11ヶ月)と言われています。そのため、赤ちゃんの高熱の場合は川崎病の可能性があることも頭に入れておきましょう。
適切な治療を適切な時期に行えば、ほとんどは後遺症なく退院することができます。ただし、まれに心臓に後遺症が残る場合もあるため、注意が必要な病気です。
【川崎病の症状】
川崎病の主な症状としてはこのようなものが挙げられます。
・高熱が5日以上続く
・発疹(BCGのあとが腫れることもある)
・両目の充血
・唇や舌が赤く腫れる
・手足の腫れとむくみ
・首のリンパ節が腫れる
【川崎病の診断基準】
川崎病のほとんどが高熱からはじまるため、初期の段階だとインフルエンザや溶連菌などの感染症と区別がつきにくい場合もあります。川崎病の場合は、高熱が続き、高熱以外の諸症状が経過の中で現れます。
感染症などの病気と区別がつきにくい川崎病ですが、診断基準としてはこのようになっています。
・高熱を含めた上記の主な症状のうち5つが当てはまる
・主な症状4つの他に心臓に冠動脈病変(冠動脈に変化)がみられた(※)
・主な症状3つ以下の場合は不全型川崎病
※冠動脈とは、心臓を動かすための酸素を運んでいる血管で、心臓の表面にある細い血管のことです。
このように、主な症状のうち5つが当てはまる場合はパパやママでも分かりやすいでしょう。主な症状が3つ以下の場合は不全型川崎病と診断されますが、これは軽症という意味ではなく、かえって後遺症が残りやすい可能性もあると言われています。
高熱が続く川崎病の治療法
川崎病特有の症状が出て診断された場合、どのような治療を受けるのでしょうか。病気の経過、治療法と退院後のフォローについてみていきましょう。
【川崎病の経過】
川崎病の治療は適切な時期に行うことが大切です。経過としてはこのような期間に分かれて考えられています。
・急性期
高熱が出て(発症して)から約10日目。主な症状のほとんどが現れる時期で、この時期に炎症を抑えることが重要です。
・回復期
高熱が出てから10日目〜1ヶ月後。発熱など他の諸症状がおさまります。
・遠隔期
1ヶ月後以降。急性期の治療で、この時期の症状の程度が決まります。
【川崎病の治療法】
・アスピリン療法
アスピリンという内服薬で、血管炎を抑える効果と血を固まりにくくする作用があります。比較的軽症な場合に使われ、他の療法と併用する場合もあります。
・免疫グロブリン療法
現時点でもっとも効果的な治療法で、免疫グロブリン製剤という血液製剤を静脈内に点滴します。全身の炎症を抑え、冠動脈病変が起こるのを抑える効果があります。
・ステロイド併用療法
免疫グロブリン療法だけでは治らない重症の場合は、炎症を抑える働きのあるステロイド併用療法が行われます。
・血漿(けっしょう)交換療法
体の血漿成分内にある病因物質を取り除くために、血液を一度体外に取り出して、健常な人の血漿成分と入れ替える療法です。
【退院後と治療法】
治療したにも関わらず、もしくは治療が遅かったために心臓の一部に冠動脈瘤ができる、つまり後遺症が残る場合もあります。川崎病では、後遺症がある場合とない場合で、退院後の生活や治療は異なります。
《後遺症がない場合》
発症1ヶ月後・3ヶ月後・半年後・1年後・5年後を目安に診察(フォロー)を受けます。日常生活の中で特に注意することはなく、普通に過ごすことができます。
《後遺症がある場合》
後遺症がある場合は、生活面、特に運動することを制限される場合もあります。ある程度長期にわたり、人によっては成年まで、さらには生涯を通じて冠動脈や心臓の診察・治療が必要になることも。
まとめ
赤ちゃんの高熱でも身近な病気ではない場合、心配になりますよね。今回は、赤ちゃんの高熱の一つの原因として考えられる川崎病についてご説明いたしました。
高熱から全身の血管炎、そして心臓の冠動脈病変という症状が起こりうる病気。適切な治療が遅れてしまうと命にも関わることが稀にある病気なので注意が必要です。
赤ちゃんは発熱がしやすいので、他の感染症と判断してしまう場合もあるかもしれません。高熱が出たら診察を受けることはもちろんですが、もし川崎病と診断されても、適切な治療を急性期に行えばほとんどの場合は後遺症なく予後も不自由なく過ごすことができます。