子育てに役立つアドラー心理学
アドラー式、アドラー流、アドラー心理学などという言葉を聞いたことがあるでしょうか。アドラーとは、オーストラリア生まれの精神科医・心理学者の名前で、彼の考えを発展させた心理学がアドラー心理学と言います。
アドラー心理学では、人間はみな平等で、人としての価値に上下はなく、大人も子どもも対等という考え方です。そのため、親が子どもに叱ったり罰を与えたりしないとともに、褒めるということもせず、対等な人間関係を築いていくのが理想とされています。子どもに自信を与え、困難を克服する力をつけるために大切なのは、叱ることでも褒めることでもなく、子どもに共感し、勇気づけることだという理論です。
このような理論を元に子育てをしていくことを、アドラー式子育て、アドラー流子育てなどと呼びます。今回はそんなアドラー心理学から学ぶ子育てについて具体的にご紹介します。
①アドラーに学ぶ「怒らない」子育て
子育てをしていると、どうしても子どもを感情的に叱ったり、嫌味を言ったりすることがありますよね。また、どうせ子どもだからできないと思い、親が勝手にやってあげたりすることも。しかし、このような状況はアドラー心理学の基本的な考えである、親と子どもが対等な関係とは言えません。
【なぜ「怒らない」子育てなのか】
怒る、勝手に進めるという行為は感情に任せて、相手を思い通りに動かそうとするためのものだからです。怒るのは子どもを恐怖に陥らせ、親がいいと思っている方向へ子どもを無理矢理向かせている行動である、とアドラー心理学では考えられています。そして怒られた子どもはやる気をなくし、学習の場をなくしてしまう可能性があります。
怒ったことで子どもがよい行動をしたとしても、それは子ども自身が本当によいと思ってした行動ではなく、ママやパパが怖いからした行動かもしれないということです。
とはいえ、子どもがルールを守らなかったり、人に迷惑をかけたりしたときに、叱らず、怒らず…というのではありません。
「怒らない子育て」というのが注目された時期もありましたが、ただ子どもが何をしても怒らないというのは、ただの放任です。そもそも子育てをしていると言えませんよね。
【アドラー式・目的を一緒に考え学びの場を作る子育て】
アドラー式の子育てでは、怒りはしませんが放置もせず、「目的論」という理論を元にして行います。子どもがどうしたいのかという”目的”をまず定め、そのためにはどうしたらいいのかを一緒に考え、そのための方法を親がサポートし、子どもに学びの場を作るのです。
子どもはできないことがあると泣く子が多いですが、親が解決策を一緒に考えることで、泣くこと以外にもできることがあるということを学んでいきます。
これがアドラー式の子育ての「勇気づけ」という技法です。怒らず、勝手にやってしまわず、子どもが自信を持って行動できるように、親はサポートに徹します。
②アドラーに学ぶ「褒めない」子育て
怒らないとともに安易に「褒めない」こともアドラー式の子育ての特徴のひとつです。褒めて育てるという言葉もよく聞きますし、子どもは褒められると喜ぶのに、なぜ褒めないのでしょうか。
【なぜ「褒めない」子育てなのか】
褒めるというのは子どもは嬉しく、たくさん褒めてもらいたいと思いますよね。しかし、先述したアドラー心理学の「目的論」として、褒められることが目的となってしまうのはどうでしょうか。何でもかんでも安易に褒めていると、褒められるのが当たり前の状況になってしまい、褒められないことがあると不安になってしまうことも。
自分がどうしたいかという自分軸で動くのではなく、ママやパパに褒められるためにはどうすればいいかという他人軸を基準にして行動するようになってしまう可能性があります。
また、そもそも褒めるということは、上下関係に基づき、アドラー心理学の人間はみな平等という考え方に反します。上の人が下の人にご褒美をあげるような関係になってしまうからです。
【アドラー式・一緒に喜び感謝する子育て】
アドラー式の子育てでは、子どもがいい行動をしたら一緒に喜びます。また、「ありがとう」「助かったよ」「うれしいな」という感謝の気持ちを伝えます。そうすることで、子どもを勇気づけ、さらに良い行動を招きます。
これも「勇気づけ」の技法です。子どもを尊重し、その行動や考え方に共感し、感謝をすることで子どもが自分で何をしたらいいか考え、勇気を持って行動ができるようにサポートしていきます。
まとめ
子どもを「怒らない」「褒めない」子育てを理想としているアドラー式の子育て。子どものことを人間として尊重し、対等に接するには、怒ることや褒めることは不要なんですね。子どもが自ら目標を持ち、模索しながら解決していけるようになるのは理想的ですよね。
自分の思い通りに行動しない子どもにイライラするなど子育てに悩んでいる方は、一度親と子の関係についての固定観念を捨て、対等である関係とはどのようなものか見直してはいかがでしょうか。アドラー式の子育てがヒントになってくれるかもしれません。