ベビーサインのはじまり
ベビーサインとは、まだ言葉を話すことができない赤ちゃんと、身振り手振りや手話などのジェスチャーで理解し合う、コミュニケーション方法の1つです。
アメリカでベビーサインという発想が生まれたのは、1980年代前半のこと。ジョセフ・ガーシアという人が、友人の聾者夫婦と耳の聞こえる子どもが、手話(アメリカン・サイン・ランゲージ)で会話をしているのを見たことがきっかけでした。
このときに、両親と手話で話をしていた子どもというのは、まだ言葉を上手く話せない小さな月齢の赤ちゃんだったそうです。 ジョセフ・ガーシア氏は、「赤ちゃんが言葉を話せるようになるのは2歳ころなのに、それよりもっと小さな子が手を使って家族と会話をしている」ということに気がつき、手のサインであれば、もっと早い時期から家族とコミュニケーションを取ることができるのではないかと研究を行うようになったのが、ベビーサインのはじまりだと言われています。
ベビーサインが全国に広がるまで
1980年代中ごろ、カリフォルニア大学デイビス校の名誉教授であるリンダ・アクレドロという人が、1歳になる娘のケイトがジェスチャーのようなものを使ってママとコミュニケーションをとろうとしていることに気づき、友人である同大学のスタニスラウス校名誉教授であるスーザン・グッドウィンと共に、ベビーサインの研究をスタートさせます。
この2人の博士は、この赤ちゃんのジェスチャーに「ベビーサイン」という名を付け、「アメリカベビーサイン社」と、その研究機関「ベビーサイン・インスティテュート」を創設し、数十年の研究から1990年代に2冊の啓蒙書も出版しました。
後にこの2人の研究で、ベビーサインを使って育児をした赤ちゃんは、知能指数をはかるIQスコアの数値が高まるというデータが発表されています。
このようにベビーサインを取り入れた育児は、1990年代半ばからアメリカを中心に広がりはじめ、現在ではイギリス、オーストラリア、カナダなどにも広がり、多くの国で実践されています。
日本におけるベビーサイン
日本では2000年に、吉中みちる(後の日本ベビーサイン協会代表理事)が、長男が生まれたときにベビーサイン育児法を実践し、夫と一緒に体験したことを「親子で楽しむベビーサイン」という書籍にしたのがきっかけに、広く知られるようになりました。
この本は、日本人が初めて書いたベビーサイン本として、また、日本手話を用いたベビーサインを紹介した初めての書籍として、注目を集めます。 その後、仲間と(NPO)日本ベビーサイン協会を立ち上げ、日本中に提唱しています。